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俺の名は一条龍之介、外ではクールで完璧なパティシエと呼ばれている。だが、裏ではツンデレで、ちょっぴり敏感な一面もある。自分のスイーツがどう評価されるかに敏感なのだ。

今日は朝から中々機嫌が悪かった。特製のティラミスを作ったのに、一部分が思い通りに仕上がらなかったせいだ。俺の完璧主義に反すると、気持ちがもやもやする。そんな時、助手の七瀬が俺の性格を知ってか知らずか、妙に明るい声で話しかけてきた。

「一条さん、今朝のリハーサルはどうでした？」

「……まぁ、悪くはなかったな。」

ついつい素直に返事をするのが俺の悪い癖だ。正直に言えば良かったとも思うのだが、デレデレするのはどうも柄じゃない。

七瀬は俺の反応を見て、ニヤリと笑った。その表情がまた気に障るというか、でもどこか安心できるというか。何とも厄介な気持ちになった。彼女の存在が俺の敏感な心に影響を与えているってことが気付かされた。

「完璧主義の一条さんでも、失敗することがあるんですね」

「うるさい、黙れ」

ツンデレな一条様はここでも健在だ。でも、実際には七瀬の助けがなければ俺の完璧な作品は赤の他人に見せられるものではない。彼女のサポートが俺の自尊心を保つためにどれだけ重要か、一言も口に出したことはないが、心の底では感謝しているのだ。

そんなことが思い出されると、次第に気持ちが穏やかになってくる。心地よい甘さが口の中に広がるかのように、スイーツを作る過程でも同じ感覚を味わうことができる。作業が進むにつれて、自分の苛立ちや完璧主義が和らいでいくのがわかる。

その日のティラミスは最終的にはほぼ完璧に仕上がり、肌触りや口どけも申し分なかった。俺は七瀬に視線を送りながら、少しだけ微笑む。ほんの少しだけ、だけど……デレっとしてる。その瞬間、彼女も俺の気持ちを察したように、満足そうな表情を見せた。何てことない会話だったけど、心の中ではいくつもの言葉が飛び交っている。

その夜、家に帰ってからも七瀬のことが頭から離れなかった。助手としてだけでなく、一人の女性としても気になる存在になってきたのだ。俺はなんて敏感なんだ、と呟きながらベッドに横たわる。まるで、スイーツのように甘い夢の中で彼女と過ごす時間を想像する。

次の日も同じように始まった。朝一番にはティラミスのデコレーションを再度確認していた。完璧に仕上がったスイーツを冷蔵庫に収納し、次の作業に取りかかる。

「一条さん、今日は何を作るんですか？」

「……マカロンだ。って、まだ言うな」

こんなやりとりが日常茶飯事だ。一条龍之介のツンデレっぷりが炸裂する瞬間である。でも、心の中では今日も七瀬のサポートがあるからこそ、俺は最高のマカロンを作れるのだ。この表現、もう耳にタコができそうだけど、本当に安心感があるのだ。

マカロンの生地を混ぜ合わせる工程は特に繊細だ。温度や湿度、混ぜる回数まで計算され尽くした手順が必要だ。俺の敏感な感覚がここで最高のパフォーマンスを発揮する。完璧な生地が出来上がると、次は絞り出しだ。七瀬の手元を見ると、まるで自分の分身のように同じ作業をこなしている。

「いい感じだな」

つい言葉が漏れる。七瀬は俺の声を聞いて、また満足そうに微笑んだ。こういうことに敏感なのも、俺のツンデレな部分だが、現実には二人の息がぴったりであることが証明されていた。

マカロンが焼き上がり、エレガントな飾りを施す。完璧を求める俺にとって、この瞬間が一番満足感を得られる時だ。七瀬と二人で淡々と作業を進めるこの時間が、俺にとっては至高のひとときだ。

その日の営業も順調に進んでいた。お客さんの反応も良好で、特に子供たちが喜ぶ顔を見ると、胸が温かくなる。俺の敏感な感覚が役立っていることを実感する。

店が閉まり、一日の仕事が終わると、俺と七瀬は一息ついた。お互いに観察しあって、お互いの存在の意義を感じる。七瀬が俺の作ったスイーツを一口食べて、頬を紅潮させる瞬間、俺の心はまた敏感に反応する。

「美味しいです」

その一言が、俺にとっては最高の報酬だ。完璧主義で敏感な俺が、初めて素直に感謝の言葉をつぶやいた。

「……ありがとうな」

それを聞いた七瀬は驚いたような表情を浮かべ、次に満足そうに微笑む。俺のツンデレな性格と、彼女の明るさがこんな風に調和する瞬間が、俺には何よりの財産だ。

これからも俺様調でこの店を引っ張っていく。完璧主義であること、敏感な一面を持ちながら、ツンデレな態度も崩さない。でも心の中では、七瀬の存在があってこその俺だと認識している。

全てのスイーツが完璧に仕上がっていく中で、俺自身も少しずつ変わっていく。偉そうに見えるかもしれないが、それが俺のスタイルだ。そして、そんな俺を支えてくれる七瀬に、今日も心から感謝する。

こうして、俺の完璧で敏感なパティシエ生活は続いていく。人生の甘酸っぱい瞬間をスイーツに込めて、一条龍之介として、今日もまた新しいチャンスと向き合っていく。

完璧を求める俺だけど、時にはデレっとすることもある。だから、俺の作るスイーツが世界一美味いんだってな。それが、俺の誇りであり、七瀬との約束でもあるから。